クリストファー・ノーラン監督の作品の世界観は、一度見ただけでは理解することができないことが多いです。
そこでこの記事では、二度目を(何回も)観ようとしている人向けに
要点を押さえたあらすじ
ノーラン監督の世界観の特徴
『インセプション』の考察に役立つポイント
を解説しています。
映画『インセプション』
要点をおさえたあらすじ
コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、他人の夢の中に侵入して、潜在意識の中からアイデアを抜き取る産業スパイ(=エクストラクター)です。
他人の夢の中で情報を盗み出すことを仕事にしているコブは、大物実業家のサイトー(渡辺謙)からライバル企業を潰すよう仕事の依頼を受けました。
しかし今回の依頼は、アイデアを盗み出すというものではなく、
ライバル企業の跡継ぎであるロバート・フィッシャー(キリアン・マーフィー)の夢の中へと侵入して、アイデアを植え付ける(=インセプション)ということです。
ロバート・フィッシャーへ植え付けるアイデアとは、自分の意思で会社を終わりにすること。
つまり、父の会社を継ぐのではなく、会社を自分自身で消して、自分の道を進ませるようなものであったのです。
コブは、妻の殺人容疑で国際指名手配犯となっているため、その犯罪歴をサイト―に抹消してもらうことを条件に、インセプションの依頼を受けたのだった…
アイデアの宝庫「潜在意識」に、思い込み(アイデア)を植え付ける=インセプション
ノーラン監督の世界観
クリストファー・ノーラン監督作品は、迷路のような世界を構築している複雑な理論が台詞で説明されます。
しかし、この理論を理解するのには時間がかかります。
クリストファー・ノーラン監督の作品の特徴は、
『時系列がシャッフルされている』
ことです。
観客は、今スクリーンで見ている映像が一体どの時間軸なのかを読み解かなければなりません。
それに加えて、カット・バック(ある主体の置かれた状態と、別の主体が置かれた状態を、交互に切り替える)と呼ばれる編集によって、現実と非現実が、それぞれの世界の時間が、反転し続けていきます。
これによって観客は迷宮的で多元的な世界を体験することになり、クリストファーノーラン監督に騙されるのです。
インセプションの複雑な世界観
夢の世界は重層構造になっているので、とてもややこしいです。
第一階層の夢の世界で夢を見ると、第二階層の夢の世界へ、第二階層の夢の世界で夢を見ると第三階層へ、と重層性を持った世界です。
また、夢の世界では現実より時間がゆっくり進んでいるよう描かれています。
深い階層に行けば行くほどその時間の流れは遅くなっていきます。
現実の世界での10時間の時間の流れが第一階層の夢の世界では1週間ほどの時間(約20倍ゆっくりに感じる)。さらに第2階層では6か月となっていきます。
あなた自身の夢の中で、すごい長い夢体験をしたと感じたことはありません? しかし、実際は起きる前の数秒間だけでその映像を見ているといわれています。それと同じようなことが起きているのです
映画考察のポイント
台詞に注目だー!
物語を自分で考察する上で重要になってくるのが、2人の女性とその台詞です。
それはコブの妻モルと、設計士のアドアドネです。
モルは、現実世界を忘れることを選び、夢の中で長い時間コブと暮らすことを選択した女性(妻)です。
しかし、現実へ戻ろうとしないため、コブはモルの夢に、(現実に戻るよう仕向けた)あるアイデアを植え付けることにしました。
その結果、現実世界でもここは現実ではないと思い込むようになってしまい、現実で自殺してしまいます。←第一階層の夢で死ぬことが現実に戻る方法だから。
その時、言う台詞が “Take a leap of faith (信じて飛べばいい)” です。
他方で、設計士のアドアドネはコブを虚無の世界へ引きずり込もうとするモルの幻影から救出しようとする対照的な人物です。
彼女は、物語の終盤にモルとは違う “Take a leap of faith(信じて飛べばいい)” を促します。
ラストの選択
さて、コブはどっちの “Take a leap of faith(信じて飛べばいい)” を選択したのでしょうか。
この選択を読み解くカギになるのがトーテムです。
トーテムは、自分が夢の世界にいるのか、現実世界にいるのかを判断するための道具です。
コブのトーテムであるコマが回り続けた場合は非現実、コマが止まれば現実です。
クリストファー・ノーラン監督はこの選択の判断は観客に委ねているといっています。
演技や世界に注目して、自分だけの考察を考えてみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
みなさんも騙されてみては?